薄毛改善のために見直す食事と栄養素

食事と栄養素

「髪に良い食事、やっぱり食生活も普段から意識しないと…」こうは思っていても、「実際のところよくわからなくて…」というのが本音なのではないでしょうか。そのような方のために、ここでは少し細かく「髪の三大栄養素」について考え、それがどう薄毛の改善に関わっていくのかを考えてみたいと思います。


まず、栄養素の基本は「五大栄養素」!

五大栄養素

栄養素を考える時、基本中の基本として押さえておきたいのは「五大栄養」です。種類としては、「タンパク質」「脂質(脂肪)」「炭水化物(糖質)」「ビタミン」「ミネラル(亜鉛)」の5つになります。「五大」というくらいですので、生きていくうえで体に不可欠な成分です。

農林水産省のホームページでは、五大栄養素について、挿絵と共に以下のように表記されています。


栄養素名 主な働き 多く含む食品
タンパク質 体をつくる 肉、魚、卵、大豆製品など
脂質 エネルギーになる バター、マーガリン、植物油、肉の脂身など
炭水化物 エネルギーになる ご飯、パン、めん、いも、砂糖など
ビタミン 体の調子を整える 緑黄色野菜、果物、レバーなど
ミネラル 骨や歯などを作る、体の調子を整える 海藻、牛乳、乳製品、小魚など

<出典:農林水産省実践食育ナビ


健康の三大栄養素

  • タンパク質
  • 脂質
  • 炭水化物

五大栄養素のうち、とりわけ健康に強くかかわるものとして、「三大栄養素」という表現も使われます。上述の農林水産省の解説の中にもあるように、「エネルギーになるもの」としての「脂質」「炭水化物」、これに「体をつくるもの」の「タンパク質」を加えたものが「三大栄養素」です。


髪の三大栄養素

  • タンパク質
  • ビタミン
  • 亜鉛(ミネラル)

一方、髪の栄養を考える時、是非とも知っておきたいのが「髪の三大栄養素」です。これは上述の「三大栄養素」とは異なり、「タンパク質」「ビタミン」「亜鉛(ミネラル)」のことを指します。体にとって、「脂質」や「炭水化物」が不要なわけではもちろんありませんが、「髪の発育」に焦点を当てた時、「タンパク質」と「ビタミン」、そして「亜鉛(ミネラル)」がとりわけ大切だとされています。よって、ここではこの「髪の三大栄養素」を掘り下げて考えてみたいと思います。


髪の90%以上が「タンパク質」でてきている!

成分

髪はケラチン(18種類のアミノ酸)が主成分

私たちの髪は、18種類のアミノ酸が結合した「ケラチン」と呼ばれるタンパク質でできています。「ケラチン」と言われても、一般的にはピンときませんが、以下のようなアミノ酸でできています。

ケラチンを作る18種類のアミノ酸
① シスチン ② グルタミン酸 ③ アルギニン ④ グリシン ⑤ ロイシン
⑥ アスパラギン酸 ⑦ セリン スレオニント(トレオニン) ⑨ バリン
⑩ アラニン ⑪ プロリン ⑫ チロシン フェニルアラニン
リジン(リシン) イソロイシン メチオニン ヒスチヂン トリプトファン

※ケラチン含有率の多いもの順に並んでいます。


「硬ケラチン」と「軟ケラチン」

実は、髪だけでなく爪や皮膚の角質層も「ケラチン」により形成されています。髪の毛や爪などは「硬ケラチン」と言われ、柔らかい皮膚の角質などは「軟ケラチン」として区別される使われる場合もあります。爪が髪と同じく「硬ケラチン」であるということから、爪が傷んでいる場合、髪も傷んでいる可能性もあるとみることもできます。


食物摂取から「ケラチン」が生成される過程

髪が「ケラチン」でできているなら、「ケラチン」はどのように作られるのでしょうか。簡単にそのプロセスを見てみましょう。

例) 肉や魚などのタンパク質を摂取

  • ① まずは「タンパク質」を「アミノ酸」に分解
  • ② 分解された「アミノ酸」を吸収し、18種類集めて再合成
  • ③ 「ケラチン」が生成

このように、私たちは何かの食物から直接「ケラチン」を取り込んでいるわけではなく、あくまでも「タンパク質」を「アミノ酸」にいったん分解し、その後「アミノ酸」を再度合成して、例えば髪の毛の成分「ケラチン」を作っています。

よって、ケラチンを作るために必要となる「アミノ酸」18種類の内どれかが不足しているような場合、適切に「ケラチン」が生成できないということになります。では、18種全部を外から取り込む必要があるのでしょうか?


「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」

実は、上の表の中で黄色くマークした9種類のアミノ酸は、アミノ酸の中でも「必須アミノ酸」と言われているものになります。これらに関しては、「体内では合成できない」ため食物などから摂取する必要があるものです。

逆に言えば、それら以外の「非必須アミノ酸」と言われるものは、外から摂取しなくても体内で作り出すことが可能と言えます。とは言え、「非必須アミノ酸」も本質的には「必須アミノ酸」を原材料としていますので、「非必須アミノ酸」も摂っておかないと全体的な「アミノ酸不足」につながります。よって、最終的には「必須アミノ酸」は優先順位として高いものの、「非必須アミノ酸」もバランスよく摂っておくことが大切であるという結論になります。


「タンパク質の摂取」で気をつけたいこと

タンパク質

ここでは、タンパク質を摂るには、どのような食事を心がければ良いのかを考えてみましょう。


「動物性タンパク質」と「植物性たんぱく質」

タンパク質は「動物性タンパク質」と呼ばれるものと「植物性タンパク質」と呼ばれるものに分けることができます。呼び方が分けられているということは、それぞれに特徴があるということになります。以下をご覧ください。


動物性タンパク質の特徴

「肉」や「魚」、「卵」や「乳製品」などに含まれる

  • 人の身体に近いアミノ酸組織なので、血液や筋肉などを作るのに適している
  • 「必須アミノ酸」をバランスが良く含んでいることから、効果的にアミノ酸を取り込める
  • 余分な「脂肪」なども取り込んでしまう可能性が高まる

植物性タンパク質の特徴

「大豆」や「納豆」、「豆腐」や「おから」などに含まれる

  • 植物性のヘルシーなタンパク質であるため、脂肪になりにくい
  • 動物性タンパク質と比較して、「アミノ酸をバランスよく摂取しにくい」傾向がある

「タンパク質」のポイントおさらい

  • 「必須アミノ酸」のみでOKではないが、「必須アミノ酸」を摂ることで、髪の主成分「ケラチン」を作り出すことができる
  • 「非必須アミノ酸」も摂っておくことで、全体的なタンパク質不足をフォローすることができる
  • 肉などの「動物性タンパク質」は「必須アミノ酸」を摂取しやすいが、併せて脂質も摂取してしまうことから摂り過ぎにはやはり注意が必要である
  • 「植物性タンパク質」だけでは「必須アミノ酸」が不足しがちなため、適度に肉や魚も摂り入れる必要がある
  • 個々のアミノ酸がどの食材に含まれているのかを考えるのは現実的ではないため、肉や魚、卵や乳製品だけでなく、大豆などの豆類もバランスよく摂ることが大切である。

髪とビタミンの関係は?

ビタミン

ビタミンと髪の関係について考えた時、一般的に髪に良いとされるのは「ビタミンB群」、「ビオチン」、「ビタミンE」などです。それ以外にも「ビタミンA」なども考えられます。まずはビタミンの性質面から考えてみましょう。


「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」

水に溶けやすい性質があるビタミンを「水溶性ビタミン」、水に溶けにくく油脂に溶けやすい性質のあるビタミンを「脂溶性ビタミン」と言います。

性質 ビタミンの種類 反応
水溶性ビタミン ビタミンB群、ビオチン、ビタミンC 摂り過ぎても尿で排出
脂溶性ビタミン ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK 摂り過ぎると体内に蓄積

このように、各ビタミンをそれぞれ「水溶性ビタミン」、「脂溶性ビタミン」と分けることができます。脂溶性ビタミンについては、過剰摂取により体内に残り、害が出てしまうこともありますので注意が必要です。


各ビタミンが持つ働き

それぞれのビタミンの具体的な働きと、それを含む食品について見てみましょう。


ビタミンB群(B1、B2、B6、B12など)

  • 「タンパク質」を分解して「アミノ酸」を摂り込むことに貢献
  • 毛母細胞の分裂サポート(髪の成長に寄与)
  • 頭皮皮脂分泌量のコントロール(頭皮の乾燥を守る)
ビタミンの種類 食材
B1 玄米、豚肉、種実類など
B2 レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品など
B6 肉、魚、バナナ、ナッツ、野菜、小麦など
B12 肉、魚、貝、牛乳、レバーなど

ビオチン(ビタミンB群中のB7ではあるものの、「ビオチン」とするのが一般的)

  • 皮膚や髪の毛の健康維持
  • 頭皮を含め、皮膚の新陳代謝の活性化
  • 頭皮の毛細血管を太くし、血流の促進
  • 不足すると、「脱毛」「白髪」「湿疹」などの皮膚症状も引き起こす
ビタミンの種類 食材
ビオチン 卵、ナッツなど

ビタミンE

  • ※「抗酸化作用」が中心的な働き
  • 血流の促進、血管の保護
  • 過剰摂取では「骨粗しょう症」のリスクが高まるとの報告もあり

※「抗酸化作用」とは、体内に取り込んだ酸素が活性酸素となって体の細胞を傷つけてしまうことから守る働きのことです。「動脈硬化」の予防や「しみ」を防ぐことにも役立ちます。

ビタミンの種類 食材
ビタミンE 魚、アーモンド、落花生、大豆など種実類、植物脂など

ビタミンA

  • 視力を正常に保つ
  • 皮膚や粘膜を丈夫にして頭皮の乾燥を防ぐ
  • 過剰摂取はNG、頭皮が硬くなってしまうこともあり→結果的に薄毛や抜け毛の原因にも
ビタミンの種類 食材
ビタミンA ほうれん草、にんじん、焼き鳥レバー、かぼちゃなど

ビタミンC

  • コラーゲン(骨や皮膚の主要な成分)を促進する
  • ビタミンEのような「抗酸化作用」もある
  • 不足すると、歯ぐきからの出血、肌のはりが悪くなるなどの影響がある
ビタミンの種類 食材
ビタミンC ブロッコリー、柑橘類、イチゴなど

「ビタミン」のポイントおさらい

  • 「ビタミン」は摂りすぎると体内に残るものと、多く摂っても排出されるものの2種類がある
  • 「ビオチン」含め「ビタミンB群」は髪の発育にも深く関わり、「水溶性タンパク質」であるため過剰摂取の心配も必要ない(積極的に摂取しておきたいものである)
  • 「ビタミンE」も髪の発育に寄与するが、摂りすぎてしまわないように配慮する必要がある
  • 「ビタミンA」は皮膚や粘膜、肌荒れなどにも関係するが、過剰摂取は脱毛や抜け毛を誘発する可能性があるため特に注意する必要がある

亜鉛の2つの役割

亜鉛

体内にはごく微量のものとされる亜鉛ですが、その役割は実に多くのものがあります。以下に簡単に亜鉛の役割をご紹介しますが、髪に大きく関与するのは、髪の成分「ケラチン」を作り出すのに関与しているという点になります。


亜鉛

  • タンパク質の合成に貢献(アミノ酸を再合成してケラチンを作ることにも寄与)
  • 体内の酵素の働きを活性化し、ホルモンの分泌などに重要な役割を果たす
  • 新しい細胞を作るときのDNA複製に貢献
  • 味覚の正常化
  • 性機能維持
  • 免疫細胞の働きを活性化
  • アルコール分解
種類 食材
亜鉛 生牡蠣、チーズ、牛モモ肉、レバー、煮干し、するめ、たらこ、ゴマ、海苔、卵黄など

亜鉛のポイントおさらい

  • 食品的にも意識しておかないと、不足しがちになる栄養素である
  • 不足すると、食事がおいしくなくなり、全体的な栄養摂取に悪影響を及ぼす可能性がある
  • 髪の毛のみならず、免疫力低下や皮膚トラブルなどを避けるためにも必要なものである

薄毛対策は「身近な食生活」から見直してみよう

食生活

抜け毛や薄毛をもたらす要因は、「食生活」のみではなく、「運動不足」や「睡眠時間」、「ストレス」の面など様々なものが考えられます。もちろん、これら以外にも本質的な原因である「男性ホルモンの作用」や「遺伝的な要素」が複合的に絡み合います。

よって、単純に食生活を意識しただけでは、なかなか改善が見られないかもしれませんが、それでもまずは前向きな一歩として食生活を意識してみてください。その上で、更に踏み込んで薄毛対策をお考えになる場合は、どうぞお気軽に当クリニックへお越しいただければと思います。

AGA(男性型脱毛症)の治療においては、すでに効果の認められている処方薬を用いますので、現実的な対処が可能となります。多くの患者様にご満足いただいておりますので、ご来院の際はご安心してご相談ください。

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